■ はじめに
やっと文章にまとめることができましたってことで、今回は先日紹介したディーノの、そのセッティング値に至った経過をダラダラと書いていきます。
特にセッティングのコツなどに言及している訳ではありませんが、何かのお役に立つかもと。
やった事を全てそのまま書いていきますので、かなりの長文(なので、画像は無し)になると思われますがご容赦を。
セッティングをする時は、ABS以外のアシストは全てOFFにします。もちろん、ドライブラインもね。
というか、私は常にABS以外はOFFなんですけどね
(ABSをOFFにすると、リアルのマイカーに乗った時の違和感に耐えられないので、標準に設定してます)。
普段アシストを使って走っている方は、まずアシスト無しで走れるように練習してください。
また、何周してもラップタイムを揃えられるような走り方が必要です。
例えばドラゴントレイルだったら、2周目以降のラップタイムのバラツキが±0.2sec以内に収まるような走り方ができれば何とかなるでしょう。
タイムにバラツキがあるという事は、走り方にバラツキがあるという事です。
走り方にバラツキがあると、セッティングを変えた時に挙動の変化を感じたとしても設定値のせいなのか走り方のせいなのか判断できません。
走り込んでコースに慣れてください。
また、この記事はハンコン+パドルシフトが前提です。
パッドやATの場合は少し様子が異なると思われますのでご了承ください。
ハンコンなのにATで走っているという方は良い機会です、MTの操作に慣れましょう。
パワーバンドを生かしたシフトチェンジができるので、同じセッティングだったらMTの方が速いですよ。
■ コースについて
私がセッティングで使うのはドラゴントレイルです。車の挙動を感じるのに一番合っていそうに感じるので。 ここで満足できるレベルに仕上がったら鈴鹿やニュル北で確認・修正を行った後、カスタムレースで鍛えてます。このコース、簡単そうに見えるんですがアップダウンもあって足回りが決まっていないと以外に苦戦するんですよ。 車ごとの得意・不得意が出やすい感じです。各ポイントでの着目点を並べると、以下のようになるかと。
①はアクセル全開で抜けられるとベスト。車がアンダーステア/オーバーステアのどちらなのか分かります。TMの最高速の調整にも使います。
②はビッグ・ブレーキング。制動中の安定性などを確認します。
③は坂を上りながらの加速ですが、コーナリング中に勾配が変わるのでステアリングの特性、リアの安定性を確認する事ができます。
④は切り込んだ際の挙動や、ステアリングを戻した時の安定性を確認します。
S字は加速しながら切り返しを行うので、ステアリング特性とリアの挙動を見る事ができます。
⑥の脱出はステアリングを切ったまま加速を開始しますのでリアの安定性が重要です。パワースライドが出やすい場所です。
コの字はブレーキを踏まずにアクセルのON/OFFだけで抜けたいところ。ピッチングに起因するステアリング特性の変化を見る事ができます。
⑦の脱出はロールに起因する安定性の変化を見る事ができます。できるだけ早くアクセルを開けられるようにセッティングします。
■ 慣らし運転
まずは車の素性を知るために慣らし運転をします。車を慣らすのではなく車に慣れるという意味です。
その際、先にパワーと車重を決めてしまいましょう。
車重は特に制限が無いのであれば、軽ければ軽いほど良い。
けどパワーは上げすぎると収まりが付かない場合があります。上のクラスに格上げする際は十分に確認しましょう。
今回はN200クラスの範囲内で、車重は最大限の軽量化を行います。
タイヤはスポーツソフトを選択。もし、異なるタイヤを使い分けるつもりなら、堅い方のタイヤから始めましょう。
その方が短時間で済みます。
慣らし運転のついでにトランスミッションの設定を行いたいので、フルカスタマイズに交換します。
それ以外は初期値のままで。
ではコースを何周かして、気付いた事をメモっていきましょう。
私のメモは以下のようになりました。
- アクセルOFFやブレーキで強烈なオーバーステアが出る。
- S字、コの字での切り返しがとっても不安定。
- ただし、アクセルを踏んでいれば少し改善する。
- ギアレシオは合っていそう。
- トラクションに問題は無し。アクセルONで滑る事は無い。
- ピッチング、ローリングどちらも大きい。
■ Test.1
セッティングのための初期設定をします。まずは車高。 リア駆動の場合、Ver.1.28くらいまでは車高を下げすぎると曲がりにくく感じる車がありましたが、今は目一杯下げても問題なさそうです。 下げれば下げるほど車が安定するので、とりあえず下げちゃいましょう。FFや4WDでは今でも下げすぎると曲がりにくくなる事が多いみたいです。 とりあえず下げてみて、曲がりにくかったら少し戻すといった調整が必要です。
ARBとトー角は、どの車も同じような初期値になっています。 パッドでもそこそこ安定して走れるようにするための値じゃないかと想像しますが。 つまり、かなりアンダーステア側の設定になっているという事。なので私はどんな車でも最初に表の値に変更します。
TMの最高速は、5速だったら①コーナーの少し手前、6速だったら①コーナーの少し先でトップギアに入るように合わせておけば多くのコースで通用します。 ただしトルクバンドが低めのエンジンの場合は+20くらい高めにして、中回転域を使いやすくすることもあります。 その場合はレッドゾーンまで回さずに、少し早めにシフトアップするような乗り方をします。 今回、最高速が260になっていますが、ちょうどイイ感じなので変更しません。 とりあえずこの値で走ってみましょう。
項目 | F | R |
---|---|---|
車高 | 85 | 85 |
アンチロールバー(ARB) | 4 | 4 |
トー角 | 0.00 | IN 0.20 |
- 切り返し時の安定感が出てきた。
- オーバーステアも若干改善されたような気がする。
- トラクション性能は変わらない。
車のフワフワした感じが若干治まったように感じます。ラップタイムは平均で0.3s程度速くなりました。 とくにデメリットは感じないので、車高はこの値で仮決めしましょう。
■ Test.2
車高が決まったら、次はバネです。経験上、腰下のフワフワ感やリアのふらつきはバネを硬くすれば改善します。 硬くするデメリットとしては、曲がりにくく感じたり、コーナーで滑りやすくなったりという事があります。 とりあえず、前後ともに下表の値に変えて走ってみましょう。
変えた時の効果を見たい場合は、0.2とか0.3とか大きめにいじった方が分かりやすいです。 それと、セッティングの初期段階は車高もバネも前後同じ値で進めるのがやりやすいと思います。
項目 | F | R |
---|---|---|
固有振動数 | 1.70 | 1.70 |
1周目であっさりとタイムを更新しました。結果としてはTest.1より0.8秒程度は速くなりそう。
①コーナーでは全開でもクリッピングに着けるようです。 バネを硬くしたデメリットは感じないし、 ステアリングのレスポンスが向上して変なオーバーステアも治まる傾向に感じます。 トラクション性能は変わらないので、さらにバネを硬くする余地がありそう。
■ Test.3
項目 | F | R |
---|---|---|
固有振動数 | 1.90 | 1.90 |
Test.2よりさらに安定している感じで、タイムも0.5秒程度向上しました。 ただし、ブレーキのタイミングによってはコーナーでリアが滑るようになりました。 ④コーナーもギリギリだけどアクセルOFFだけで行けるようになってきました。 トラクション性能は変わりませんね。
■ Test.4
項目 | F | R |
---|---|---|
固有振動数 | 2.10 | 2.10 |
ステアリングのレスポンスはイイ感じですが、リアが滑りやすいように感じます。 タイムは若干向上しましたが、コーナーで無理ができないような感じです。 なので、バネの設定はTest.3の値で仮決めします。
1.90と2.10の間をとって2.00にするという考え方もありますが、これからオーバーステア対策をしなくてはならないので、 その余裕を持つため1.90を選択するということです。
■ Test.5
次はアンチロールバー(ARB)を試してみましょう。ARBの値を大きくすると、バネを少し硬くしたような特性に感じます。
項目 | F | R |
---|---|---|
固有振動数 | 1.90 | 1.90 |
アンチロールバー(ARB) | 5 | 5 |
ステアリングを切り返した時、車が安定しています。S字区間やコの字の出口が走りやすくなりました。
走りやすいだけでは無く、タイムも0.5s程度短縮しました。
限界を探るため、もう一段強めてみましょう。
■ Test.6
項目 | F | R |
---|---|---|
アンチロールバー(ARB) | 6 | 6 |
さらに腰下のしっかり感が出てきて、ステアリング特性が良くなるように感じます。 しかし、S字でリアが不安定になりますね。アクセル操作に気を遣う必要がありそうです。
タイムは若干向上しますが、気を遣いながら運転するのはイヤなので、この設定は却下。 ただ、このレベルは好みの問題でもあるので、こっちの方が乗りやすいという人もいるんじゃないかな?
■ Test.7
次はダンパーの調整です。ダンパーはステアリング特性に対して以外と影響しますよ。経験上、ディーノのようにアクセルOFFした時にフロントが沈む事によってオーバーステアが出る車に対しては、 フロントを強めに、リアを弱めにすると安定する傾向にあります。 アンダーステアな車はその逆ですね。
バネを硬くする事とダンパーを硬くする事の違いはご存じですか? イメージ的には、バネを硬くすると沈み込む量が減少します。 ダンパーを硬くすると、最終的に沈み込む量は変わりませんが、沈みきるまでに時間がかかるようになります。 つまり、サスの動きを阻害するということです。 なので、硬くし過ぎると縁石で跳ね上げられたり、橋の継ぎ目でステアリングにショックを感じる事があります。
下表の値は全くの勘です(多少、経験値も入ってますが)。中央値を基準にして少し振ってあげるという感じです。
項目 | F | R |
---|---|---|
アンチロールバー(ARB) | 5 | 5 |
減衰比(縮み側) | 63 | 60 |
減衰比(伸び側) | 92 | 90 |
これで走ってみたところ、オーバーステアは改善する方向にありますがS字が乗りにくくなってしまったように感じました。 なんだかリアが不安定というか、挙動が安定しません。ちなみにタイムは変わりませんでした。
リアが弱すぎるんでしょうか、少し強めてみましょう。
■ Test.8
リアを強めるとともに、バランスをとるためフロントも強めておきます。
項目 | F | R |
---|---|---|
減衰比(縮み側) | 64 | 62 |
減衰比(伸び側) | 93 | 91 |
何が変わったのかって言葉では表現しにくいのですが、コース全体を通して乗りやすく感じます。タイムも0.7秒ほど向上しました。
そのためか、アクセルOFF字のオーバーステアがかなり気になるようになってきました。
とりあえず、ダンパーはこれで仮決めにして次に進みましょう。
■ Test.9
ちょっとLSDを試してみます。アクセルON/OFFでステアリング特性が変わる車は、LSDで変化量を抑える事ができる場合があるんです。
フルカスタマイズに換装して、10/30/20に調整の上走ってみると。。。
S字は変わりませんが、その他のコーナーでは挙動が安定したように感じます。しかし、タイムは少し落ちました。
オリジナルのLSDから判断すると、弱めが吉?
■ Test.10
LSDの設定を10/25/15に変更して走ってみます。
と、Test.9よりは安定感が落ちますが、オリジナル値よりは乗りやすく思います。Test.8のタイムを0.5秒ほど更新しました。
もう少し細かく値を変えながら走ってみるのもアリですが、大きな効果はあまり期待できそうも無いのでLSDはこの値で決定とします。
■ Test.11
アクセルOFF時のオーバーステア対策として、フロントのバネを硬めにしてみます。OFFした時にフロントが沈んでオーバーステアになる感覚なので、バネを強くして沈まないようにするという考えです。
項目 | F | R |
---|---|---|
固有振動数 | 2.00 | 1.90 |
タイムは変わりませんが、S字やコの字が乗りやすくなったように感じます。
オーバーが治まるにつれ、リアがズリッとくる挙動が目立ってきましたが。。。
■ Test.12
バネとダンパーで、フロントをもう少し沈みにくくしてみます。合わせて、リアが流れるのを抑えるためにトーも調整します。リアのトーはイン側に大きくすると、リアが流れにくくなります。つまりアンダーステアに感じるのです。 逆に小さくすると車の向きが変わりやすくなります。なので私はアンダーステアに感じる車では小さくします。 ただし、リアが不安定な状態に陥りやすいので走る時は気をつけましょう。
項目 | F | R |
---|---|---|
固有振動数 | 2.05 | 1.90 |
減衰比(縮み側) | 65 | 62 |
減衰比(伸び側) | 94 | 91 |
トー角 | 0.00 | IN 0.25 |
オーバーステアはかなり改善しました。S字でもリアの落ち着きが増しているし。
レイトブレーキングでリアがズリッとくる挙動がありますが、 そもそもMRは早めのブレーキングがセオリーなので仕方ないと諦めるべきかも知れません。 いずれにしろ、何周走っても今までより速いタイムでラップできますね。
■ Test.13
ARBを片方だけ変えてみたり、フロントのバネをもう少し硬くしてみたり、トーやキャンバーをいじってみたりと、
細かな調整を試みましたが、いずれもTest.12より乗りやすくなるという事はありませんでした。
タイムが少し向上する設定もあったけど、操作に気を遣うようになったりしたので全て却下。
と言うわけで、Test.12の結果をもってこのコースでのセッティングは完了です。
その後、鈴鹿とニュル北のテストによりフロントのキャンバーを1.0にしておいた方が良さそうに感じたので、
紹介したセッティングデータはそのようになっています。
項目 | F | R |
---|---|---|
車高 | 85 | 85 |
固有振動数 | 2.05 | 1.90 |
アンチロールバー | 5 | 5 |
減衰比(縮み側) | 65 | 62 |
減衰比(伸び側) | 94 | 91 |
キャンバー角 | 1.0 | 1.5 |
トー角 | 0.00 | IN 0.25 |
ダウンフォース | - | - |
LSD(初期) | - | 10 |
LSD(加速) | - | 25 |
LSD(減速) | - | 15 |
T/M 最高速 | 5MT / 260 | |
■ まとめ
と言うわけで、セオリーとか魔法の方程式みたいなものは一切有りません。
セッティングのたびに4、5日かけて300~500kmくらい走る感じです。
自分でセッティングしたいけどそんな時間は無いと言う方は、私のセッティングを初期値に使って少し修正を加えてみてはいかがでしょうか?
例えば今回のディーノ、ARBを6にしても面白いかも知れませんよ。
今回は分かりやすくするために「さっきより速くなった」といった記述をしていますが、
基本的には乗りやすくなったかどうかで判断しています。
一発のタイムも重要ですが、何周しても同じタイムで走れるセッティングが重要だと思うんですよね。
レースになると理想のラインで走れるわけではないし、想定外の場所でブレーキを踏まされたりします。
ラインを外したらガクッとタイムが落ちる車なんてごめんですからね。
駆動方式が異なる車ではセッティング時の着目点が少し異なりますが、基本的には同じ方法で進めています。
と言うわけで、今回はここまで。楽しいセッティング・ライフを楽しみましょう。
では、また。
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はじめまして
返信削除ひじょ~に参考になりました
はじめたばかりでどこから手を付けて良いかも
分からなくて困っていました
今後の追記にも期待しちゃいます
よろしくお願いします